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タイトル :天才釣り少年に学んだ日その2
配信日時 :2021/04/07(水) 06:00

本文:

『価値あるものと見なされるこの世の全ての楽しみと比べてみても魚とり
これに勝るものはなし』

『説教する人、物書く人、専制する人、戦う人。利益の為か、娯楽の為か、
いずれにしても最後の勝利者これ魚とり』
By トーマス・ダーフィー 「釣り人の歌」
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大井です。

前回は、天才釣り少年との出会いを話しましたが、

もう少し、その少年のことを書いてみたいと思います。



まず、そのいでたち。

ひときは目を引いたのは、ランディングネット。

ラバーネットで少年の胴体より大きいものでした。



私は想像します。

少年が自分で大きさを選んだんじゃないかと。

小さいのはいやだ、でかいのがいいと。

でかいのを釣るんだと。




日本のFFマン、特に川で釣りをする人たちは、

ランディングネットが小さい。


クレモナ編みの染色された綺麗なネットが美しいのは分かりますが、

いかんせん、こじんまりしすぎている。




私が世界大会へ行った時、

そこそこ大き目のネットを持って行ったつもりだったんですが、

オランダやフレンチ達から、こんなことを言われました。



「しょうぶ、お前はそのネットに入るまでの魚しか釣らないのか?

この時点で、負けを認めているようなものだぞ、ははは・・」

と。



馬鹿にされたのです。

そう、彼らは皆ランディングネットはでかかった。

どんなでかい魚がかかっても大丈夫なようにと。



というか、でかい魚を釣ることが前提でやるんだから当たり前だと。


「くそ、そりゃそうだよな、視野の狭さと経験不足だ・・」


まあ、確かに、

日本の渓流で釣りをしていれば、

小さいネットでも事足りることが多いでしょう。



私も、ずっと小さいネットを背中にちょこんとぶら下げるのが、

かっこいいのかな・・、と思っていましたし。



でも、本流や北海道でも、

日本人はやはりまだまだ小さい。

奴らに比べれば。



体に大きな負担がかからない程度に、

でかいランディングネットを背中にしょうべきだと今は思います。

時と場合にもよるでしょうけど。




で、

この辺の感覚。

もうすでに、少年にはあるのです。



普通の子供なら、

大きすぎる、重い、小さいのでいい、

とこうなるはずです。



ところが、この少年は、

でかい魚が掛かることを前提とした準備が当たり前で、

だからランディングネットがでかいのも当たり前。



背中に背負えないので、

背中のベルトに差し込んで釣りに望むその前のめりな姿勢。


「や、やるな・・」


私はそう思いましたね、ホント。



それで、そのでかいランディングネットを

何度か背中から抜き取って水面に向け、

魚をランディングする手順を練習していましたから。



釣る前に。

小さい体なので、

ランディングネットに振り回されそうになりながら。




次に、その立ち方。

いつでも魚が掛かっていいように、

全身をリラックスさせながらしかし隙なくその瞬間を待つ姿。



武道の試合の時に、相手と対峙した選手のような

凛々しさを醸し出していました。


なかなか、この雰囲気を出せる子供はいない。



だいたいが、

何となくぼお〜っとした表情で棒立ちの釣り人が多い中で、

戦闘態勢に入り戦う姿勢に満ち溢れていましたね。



釣りというのは、ハンティングなんだから、

当然相手との戦いである訳です。



ハンティングというと、

何だか言葉の響きでその事実をごまかされそうですが、

要するに、相手を殺す行為です。


自然河川や湖はもちろん、管理釣り場やC&Rでも。

逃せばいいという問題ではない。




少年は、こういうことが本能的に分かっていて、

したたかな強さをすでに持ち合わせているようでした。



大げさに言えば、

人が生き延びていくには、他を殺さなければいけない。

それが、この世界のルールである。



というような大前提をすでに了解している感がありましたね。

理屈は分からなくとも。




要するに、

頭が冴えているのです。

頭がいい子なんです、こういう子は。

学力とか、暗記とかではなく。



主体的に考える能力といいますか。




ということで、

曇りのない目で周りを見渡せば、

この少年のような子供はあちこちにいるだろうし、

実は、昔のあなたや私がそうだったかも知れない。



ところが、

いつの間にか全ての現象を色眼鏡でしか見なくなって、

どんよりとした景色だけが目の前に広がっているだけ。


こんな大人が多すぎる訳で。



あれダメ、これダメと、

ダメダメ論で育った子供は、萎縮して生きるしか方法はなくなる。




子供にいい教育をとか言う前に、

日々子供から学ばなければいけない。



学んでいるのは大人の方で、

子供の純真無垢なエネルギーから教わることは限りなく多い。


大人の能力なんてたかが知れている。


違うかな。

常識なんてクソくらえってね。



ではまた。


Tight Line!







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■前回記事


大井です。



ちょっと前のこと、

ポンド釣り場でDループ系キャストの釣り(イマージング)
練習をしていた時です。



隣からこんな声が聞こえてきた。



「水が少ないし濁っている。魚の活性はよくないな。

もう少し水が増えて透明になればいいんだけどな~、今日は厳しいな・・」



その通りなんだよ、

と、隣を見ると釣り少年が辺りを見回している。

少年はおそらく、小学2~3年生。




ロッドを持ったその佇まいは、

周りの大人達より、釣りの何たるかを完璧に表現していた。




釣り場に立ち、すぐさま放った言葉の分析能力の高さ、

そして、ロッドを持ち大きなラバーネットを背中のベルトに

差し込んだその出で立ち。




様になっていて、

「この少年、間違いなく釣りは上手いだろうな・・」

と、すぐさま納得させるものがあった。




少年は祖父とフライのタックルをそつなく組み、

おもむろにキャストを始めた。




大きなマーカーをつけたシステムは、なかなか投げづらい。


しかし、何というか、

キャストのしなやかさやピックアップ時の滑らかさ、

プレゼンテーションの繊細な気遣いなど、

周りの大人を超えた高いセンスを感じた。




大きなマーカーがピクピクっと動くと、

瞬時にロッドを煽り同時に左手でラインを引く。



「あ~、今、掛かりがわるかったな~」



その様が、素晴らしく絵になっていて、

これ以上ないほどの躍動した合わせであった。




「この少年、天才的な釣りの感性があるな・・」




私は、深く納得しまだ出会って数分なのに、

この少年のファンになった。



少年は、ダブルホールはまだやれていなかったが、

例えば私が教えれば、30分もしないでその動作はすぐに

習得し上手く投げられただろうと思う。




それほど、

俊敏な運動能力と状況分析、適応力に優れ、

何でもすぐに吸収してしまう可能性に満ち溢れていた。




もちろん、

祖父や大人の手ほどきで釣りを始めたんだろうが、

もうすでに、自分の頭で考え試行錯誤を継続し、

釣りの肝というか、上達するために何が必要かを、

パーフェクトに把握しているかのようだった。




「このまま育ったら、間違いなく、

トップレベルの釣りのプロやインストラクターとして、

活躍するだろうな。」




道具を売るプロとかうさんくさい人気者ではなく、

腕そのもので、周りを圧倒するぐらいの存在として。




「世界大会でも優勝できそうだな」



私は、確信に近くそう思った。




別の池で、

今度はルアーを投げ始めた。




片膝をついた姿勢で、

タイトにルアーを投げる姿も、

惚れ惚れするほどである。




シュッとロッドを振り、

飛んでいくルアーを目で追いながら、

フォロースルーを入れていく。




着水と同時に、

構え方を変え、滑らかにリールを回転させ巻き取っていく。



ところどころで、

繊細にアクションを変えていく。




私は、ルアーはやらないが、

この少年のキャスト姿を見ていると、

ルアーも面白いかもしれないな、

やってみるかな、

と言う気にさせられるのだ。

(こんなことは初めてである)



これは凄いパフォーマンスである。

私をこんな気にさせる少年は他と何が違うのか。




周りのヒップポッパー崩れの

ルアーの若者たちが束になっても叶わないだろう。



当然、少年は周りの大人たちに遠慮せず、

一番に釣っていた。




少年は他と何が違うのか?

何を持っているのか?

何を考えているのか?

私は思考を巡らせた。

何が違うのか?




あなたに分かるだろうか、何が違いを分けるのかを。



おそらく、

釣りに限らず、どんな分野でもその才能を発揮していける基盤はある。

頭の固い大人たちがこの少年の才能を潰さなければ。




そう、

周りにの大人は少年の可能性に本当の意味で気付いていないかも知れない。

世間の常識に当てはめ少年をジャッジするかも知れない。



そのことが、

芽を摘むということだとボンクラな大人たちは気付かない。

そうならないで欲しい。




今のままで、のびのびとその感性を開花させていって欲しい。

そう感じせざるを得ない出会いだった。



そして、

このことは、

いい年こいた我々にもそのまま当てはまる環境要素だと、

私は思う。




その日、何十人といた釣り人の中で、

このことに気付いた人間は、私一人だっただろう、たぶん。



実はここに、大きな違いが潜んでいるかも知れない。




釣りが上手くなる本当の要素は何か?


あなたにも考えてもらいたい。






ではまた。



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俺たちは、まだまだ挑戦者だ。








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