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タイトル :タイイング裏戦術
配信日時 :2019/12/04(水) 06:30

本文:

『価値あるものと見なされるこの世の全ての楽しみと比べてみても魚とり
これに勝るものはなし』

『説教する人、物書く人、宣誓する人、戦う人。利益の為か、娯楽の為か、
いずれにしても最後の勝利者これ魚とり』
By トーマス・ダーフィー 「釣り人の歌」
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大井しょうぶです。



あれですよね、

当然、毛鉤を巻くにあたっては、
美しさ、バランスの良さ、色の配置、模倣の正確さ、
などが、その評価の基準になると思います。

テールとボディーは1対1で、とか。
ウイングは左右対称で同じ長さで、とか。

しかし、
本当にそれだけでいいのだろうか?と。


ある日の夕方、
メイフライのハッチに遭遇し、スペントフライを投げ続けました。
スペントというか、羽落ちですね。
魚はバコッとかピシャとかとイブニングライズの宴。

ハッチしている虫も特定できているし、サイズもあっている。
でも、反応はぼちぼち。
釣れるには釣れるんですが、ぼちぼち。

そうこうしている内に、そのサイズのフライがなくなり、
やむおえず、アンバランスに巻かれた失敗作の毛鉤を結び釣りを再開したのです。

当然ダメだろうと。釣れないだろう、このフライじゃ。

でも、ライズは続いているし止めるのも勿体無いので、
惰性で釣りを続行したのです。


そしたら、どういうことか?

そのフライがもの凄く反応がいい。
いや〜、驚くほど。

「おお〜、いきなりひったくるような食い方だ」

魚の方から、猛然とアタックしてくるような状況になったのです。

しばらく入れ食いでしたね。

流れ去ろうとする毛鉤を下流へ追いかけ、
浮上しながら襲いかかるといった感じで。

サイトの釣りができたので、
魚の捕食行動もつぶさに観察でき、
フックセットの瞬間は「してやったり」でした。

魚が反転する瞬間を狙えば、ほぼ確実にフックセットできたのです。
カウンターフックセットです。

「バコッ」と。


それにしても同じ種類の毛鉤です。
でも、何かが違った。

何が違うかといえば、アンバランスなウイングと
その形、枠線。

それしか考えられません。

何が魚の捕食スイッチを爆発させたのか?
未だに謎ですが、アンバランスで不安定な肢体が逆に生命力を演出し、
もしくは、捕食対象として絶好な流下形態を取っていたのだろうと推測されるのです。

立て続けに釣った後、
そのフライを手にして思わずほくそ笑んだのです。

「ニヒヒ・・これか、そういうことか」

コマーシャルフライとして店頭には間違っても並ぶはずのない、
誰が見ても失敗であろうこのフライ。

それが、ここまで魚を惹きつけた。

その事実が、たまらなく快感であり、
言うなれば、そこに芸術性を見た気がしたのです。
毛鉤制作は上手くあってはならない、みたいな。
(taro okamotoを釣りに当てはめればこうなります)


例えば、額に飾られるようなフライ。
バランスは取れ欠点は見当たらず、色彩も見事なフルドレッシングのサーモンフライ。
これは美しいものですが、
でも、美しいな〜という領域を突破はしていない気がするのです。

私は、この時の失敗作のアンバランスな誰も見向きもしない
この毛鉤を、額縁に入れて飾りたい。

訪れた人が、この額縁に入った毛鉤を見て、

「何で?」

と、首を傾げたとしても。


突っ込みどころがない見事なサーモンフライ。
突っ込みどころが満載な失敗作のスペントフライ。

どっちに可能性を感じるかといえば、
強引にでも、失敗作の方であると思いたいし事実そうであろうと思っています。

だってですよ、
フライボックスの隅っこに長年鎮座していたゴミ同然のフライが、
あれだけ魚を惹きつけたんだから。

これも、逆を釣ることの一つではないだろうかと。


ということで、
美しいだけではない。
いや、美しいだけではダメであると教えられた出来事でした。

美しくないものの中に、美しさを超える何かがあるのではないか?
という、発想。


正直に言えば、
額に飾られたサーモンフライに、あまり魅力は感じない。


「壊れかけの、崩れそうな、それでいて強い生命力」

が醸し出され、

「切なさ」

さえ感じられる、実際に釣れまくった毛鉤。

私は、こういうのにときめいちゃうんですね。


もちろん、美しいとは思いますよ。
完璧なバランスのコマーシャルフライやサーモンフライは。

でも、何というか、それ以上には中々ならない。私の中では。


要するに、

「バランス悪くたっていいんじゃない?」

と。


逆に、

「バランスを悪くしないと釣れないんじゃないのか?」

とまで振り切ってしまうと、
また、面白き世界観が広がるのではないかと。

完璧なバランスのとれた毛鉤は、その中の一つの形態であるという位置付け。

何といっても、相手は生き物ですから。
水生昆虫も魚も。

実際、わからないことが多すぎるのであって、
わかった気がしているのは、勘違いの連続だったりするのも世の常です。


ということで、
ちょっと強引な感も否めませんが、(笑)

発想法の一つとしてはアリなんじゃないでしょうか。



Tight Line!







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