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タイトル :釣りに向かう朝
配信日時 :2017/12/31(日) 18:00

本文:



釣りに向かう朝



Haze(ヘイズ)
https://www.youtube.com/watch?v=x-YnzVx6aPI




忘れたらいけないんだ。

あの時の想いを。



切なさを。

虚しさを。

愛おしさを。



何でもできると思っていた。

栄光の道が目の前に広がっていくだけだと。



でも、


おまえには価値がないと、教育もされてきた。



大人との闘いだった。

回りのやつらは、誰も何も言わない。

負け犬達が、俺の脛をかじる。




それでも、

夢は日常を破壊するほど強く、

世界を知ることだけが真実だと信じ、夜を越えてきた。



それが、だ。


いつしか、

いつしか、



想いは、情熱は、

あの時の想いが・・、あの時の情熱が・・、


燃えないゴミの日に、一緒に通りの角に出され、

何の疑いもなく処分されていった。



家電製品や瓶や空き缶と一緒に、

砕かれて粉々になり、

跡形もない物質に分解され、空に溶けていった。




でも、それでも、


忘れられないあの瞬間。


世界に届いたと本気で思った。



あの時の想いが、真夜中にフラッシュする。

目が眩むような感覚に、嘔吐しそうになる。





忘れてはいけない。


あの時の情熱を。


どう、言葉にすればいいのだろう。


あの想いを再現している小説はどこかにあるのかい?


映画でも。

絵画でも。





あの時のあの想いは、

あの時だけのまぼろしだったのか?


いったい、どこへいってしまったんだ。




でも、

それでも、


心の一番深くやわらかいところで、

決して消えることはない。




戻りたくったって戻れない。


もう、戻れないんだ。


もう、戻れないんだよ。




だから、


少しでも、

少しでもいいから、


あの時に近づきたくて、


あの川に立つ。



そこには、全ての感情があるだろうか?


果たして、あの時を鮮やかに映し出してくれるだろうか?



風化させない。


長い時間、眠らせれてきた。

どんよりとした灰色の街を彷徨った。



でも、蘇るんだ。




あの時のあの夜のあの風とあの想い。


忘れてはならない。


本当の自分だった。


嘘もごまかしもなかった。




何もなかった。


何もなかったけど、全てが確かにそこにあった。





誰でもあることなのか、それは分からない。


誰にでもあるんだろう、たぶん。




そのことに蓋をして、気付かないふりをして息だけをしている。


それが、大人になるということだ、と、

悟ったような振りだけをする。




だが俺には分かってしまう。



悲しいことが多かっただろう。


情けないことが多かっただろう。






夜を飛び越えて、

あの時に会いに行きたい。



あの夜よ、甦れ。


あの時よ、甦れ。



そう祈り、釣りの朝を迎える。




いつかこの祈りは通ずるだろうか。


いつかおまえに会えるだろうか。





過去は変えられる。


ぶざまだったあの夜がいつか輝く。


いつか輝く。





良かったんだと。




いつか、


いつか・・・。






夜を飛び越えて、



釣りの朝を迎える。









Shobu








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